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フォンテジェス欧州議会議長とバローゾ欧州委員会委員長は、5月29日のフランスの欧州憲法条約批准否決を受けて、「欧州の建設は、必然的に複雑な作業である」「今日欧州は存続しており、諸機関も完全に機能している。我々は困難について認識してはいるが、EUを前進させていくための手段を再び見出すことができると確信している」との共同声明を発表した。また、6月1日のオランダの批准否決後には、「我々は、依然として欧州憲法条約がEUをより民主的で効率的かつ強力なものとすると信じており、すべての加盟国に憲法条約に関する意思を表明する機会が与えられなければならない」「欧州の諸機関は欧州市民の関心事に耳を傾け、それに対応していく」と表明した。 欧州労連(ETUC)は、「決定は、EUの拒絶だけでなく、新自由主義への拒否反応を示している」「社会的欧州を無視する加盟国によって新自由主義と関係のない憲法条約が犠牲となった」と主張した。欧州理事会に対しては、「欧州の政策において社会的側面に配慮し、その問題に関する労使協議を進展させることにより、再び欧州市民の信頼を得るよう」促している。 欧州産業経営者連盟(UNICE)は、「フランスの国民投票における否決は、EUを市民に近づける努力が足りなかったことを示している」と強調し、「現在の困難が欧州統合を妨げ、企業にとってより困難な状況を作り出すことは、なんとしても避けねばならない」と表明した。オランダの投票の後には、ストローブUNICE会長が、「欧州市民の不満の1つの理由は、時代遅れの政策による脆弱な経済実績である。我々は、欧州議会、欧州委員会および加盟国に対し、グローバル化した世界においてEUの経済を成功に導くよう促していかなければならない」と述べた。 6月16日に開催された欧州理事会では、憲法条約の批准手続きに関する討議が行われ、1)憲法条約条文の修正は行わない、2)加盟国の批准手続きの期限を2007年半ばまで延期する、3)オーストリアが議長国を務める2006年前半に加盟国の議論の動向や批准手続きの進め方について検討を行う――ことで合意した。議長国ルクセンブルグのユンケル首相は、「批准手続きは継続される」「欧州理事会は、憲法条約批准の国民投票を延期せざるを得ない加盟国は、議会承認により批准手続きを行う加盟国よりも、反省、説明、討議のためのより長い集中的期間が必要であることを全面的に理解する」との声明を発表した。 7月からEU議長国を務めるイギリスのブレア首相は、6月23日の欧州議会における演説で、「フランスとオランダの国民投票では、憲法条約が欧州の国内問題に関して広く深い不満を抱く人々が抗議するための乗り物となってしまった」と述べ、「今は、我々が現実を見据える時である。人々が我々の政治的指導力を問題ではなく、解決の一部と見なしてくれるよう、人々の声に耳を傾けなければならない」と主張した。また、7月1日のバローゾ欧州委員会委員長との共同記者会見でブレア首相は、今秋に欧州の将来について議論するための非公式EU首脳会議を開催する考えを明らかにした。同会議では、「21世紀の欧州を取り巻く環境の変化に対応した欧州社会モデルの持続可能性と挑戦」について討議を行うとしている。 2.欧州憲法条約否決の背景 欧州憲法条約制定の目的は、統合の進展、東欧への拡大により、肥大化、複雑化したEUの組織・制度・法体系を簡素化・効率化することにあった。憲法条約が発効しなくとも、EUの運営は、憲法条約の基礎となったニース条約(2003年発効)に基づき、当面は支障なく行われる。 フランスとオランダにおいて憲法条約が否決された背景には、さらなる国家主権喪失への恐怖、無制限な門戸開放への恐れ、グローバル化への反発などの理由があったと見られている(ツェプター駐日欧州委員会代表部大使、6月11日付朝日新聞)。欧州委員会が発表したフランス、オランダの国民投票後の世論調査結果(表1)によると、フランスの否決理由は、「雇用、企業移転、失業への悪影響」(31%)、「経済状況の弱さ、失業の多さ」(26%)、「憲法条約が自由主義に傾斜しすぎているとの印象」(19%)、「政府や特定政党への不満」(18%)、「社会的側面への配慮が十分でない」(16%)などが上位を占めた。オランダの否決理由では、「憲法条約に関する情報の不足」(32%)、「国家主権喪失への恐れ」(19%)、「政府や特定政党への不満」(14%)、「欧州は費用がかかりすぎる」(13%)などが上位に挙げられた。それらの背景について、EUを取り巻く状況を紹介する。 表1.フランス、オランダの国民投票で 欧州憲法条約批准に反対と答えた理由 フランス オランダ 理由 % 理由 % 自国の雇用、企業移転、失業への悪影響 31 情報不足 32 自国の経済状況の弱さ、失業の多さ 26 国家主権の喪失 19 欧州憲法は経済的な点で自由すぎる 19 政府や特定政党への不満 14 政府や特定政党への不満 18 欧州は費用がかかる 13 社会的欧州が不十分 16 欧州、欧州憲法、欧州統合に反対 8 欧州憲法は複雑すぎる 12 自国の雇用、企業移転、失業への悪影響 7 トルコのEU加盟に反対 6 欧州憲法の内容に良い点がない 6 国家主権の喪失 5 欧州憲法は早く進みすぎる 6 情報不足 5 専門的、法律的で規制が多すぎる 6   さらなるEU拡大に反対 6 欧州憲法は複雑すぎる 5 欧州憲法は十分民主的でない 5 欧州憲法は経済的な面で自由すぎる 5 自国の経済状況の弱さ、失業の多さ 5 欧州の政治統合、欧州連邦政府、欧州合衆国を望まない 5 欧州は急速に進展しすぎる 5 欧州憲法の普及広報活動が十分でなかった 5 欧州憲法は我々を欺いている 5 (1)EU拡大 EUは、1951年のベルギー、ドイツ連邦共和国、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6カ国による欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立以来、順次加盟国を増やしてきた(表2)。EUに新規加盟するためには、1993年のコペンハーゲン欧州理事会で定められた、1)民主主義、法の支配、人権および少数民族の尊重と保護、2)EU域内での競争力と市場力に対応するだけの能力、3)政治目標、経済通貨同盟を含む加盟国としての義務の履行――などの基準を満たす必要がある。 2004年5月1日、EUは新規加盟10カ国(キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア)を迎え、25カ国に拡大した。2007年には、ブルガリアとルーマニアの加盟が予定されており、実現に向けた交渉が進められている。トルコについては、1999年に加盟候補国に決定し、2004年12月の欧州理事会において、2005年10月3日から加盟交渉を開始することで合意した。また、クロアチアが、2004年6月18日、加盟候補国に決定している。 トルコは、1987年に加盟申請を行って以来、ずっと加盟基準を満たしていないと判断されてきた。その背景には、キプロスの一部を占領し樹立したキプロス・トルコ共和国の問題、水準の低い司法・人権保護制度、脆弱な経済力、宗教の違いに基づく生活習慣や考え方の相違、地理的に欧州でなく中近東に属していること――などの要因があった。従来加盟交渉を行った国はすべてが加盟を果たしているが、初のイスラム教国の加盟や安い労働力の流入への恐れなどから、EU市民の間にはトルコの加盟に対する強い懸念が存在する。欧州委員会は、2005年6月29日、トルコとの加盟交渉の原則や手続きを示した厳格な交渉枠組みを発表した。また、EU加盟国と加盟候補国の間で、相互理解を促進し、EU市民の心配に応え、EU拡大に関する討議を推進するための市民社会対話を実施することを決定した。欧州委員会のレーンEU拡大担当委員は、「トルコの加盟交渉は、長く厳しい道のりとなるだろう。我々は、EU市民の懸念を考慮しなければならない」と述べた。 表2.EU拡大の歴史   年 加盟国 加盟国数 ECSC発足 1951 フランス、ドイツ連邦共和国、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ 6 第1次拡大 1973 イギリス、アイルランド、デンマーク 9 第2次拡大 1981 ギリシャ 10 第3次拡大 1986 スペイン、ポルトガル 12 第4次拡大 1995 オーストリア、フィンランド、スウェーデン 15 第5次拡大 2004 キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア 25 第6次拡大 2007 ブルガリア、ルーマニア(予定) 27 加盟候補国   トルコ、クロアチア   (2)人の移動の自由 EUは、単一市場の理念に基づき、域内での人、物、サービス、資本の移動の自由化を進めている。 人の移動の自由に関しては、EU加盟国の国民はすべて自動的にEU市民となり、すべての加盟国の領域内で自由に旅行し、滞在し、居住する権利を有する。この権利には、職業資格の相互認証、市民権、労働者の自由な移動、社会保障制度の協調が含まれる。 労働者の自由な移動に関しては、経済力に劣る新規加盟国の労働者が旧加盟国の労働者の職を奪ってしまうことが懸念された。そのため、2004年5月のEU拡大後、雇用者として働くことを目的とした新規加盟国(マルタ、キプロスを除く8カ国)から旧加盟国(15カ国)への移動を、最長7年間制限することができることとした(イギリス、アイルランド、スウェーデンは制限措置を採用していない)。 最初の2年間、旧加盟国は自国の法律や政策に基づいて制限措置を実施できる。2年経過後、旧加盟国は、所要の手続きを経た上で、この制限措置をさらに3年間継続することができる。制限措置は基本的に5年間を限度としているが、労働市場に深刻な混乱が生じている場合にのみ、さらに2年間の延長が認められている。 EU加盟国の国民は、職業または職探しのために、他の加盟国に入り、またそこで生活する権利が認められており、労働者本人に限らずその家族も労働者とともに自由に移動することができる。また、雇用、労働条件、その他労働者の社会統合を促進する利益に関して均等待遇を受ける権利が保証されている。 フランス、オランダで欧州憲法条約が否決された要因には、こうした人の移動の自由化を背景とした、イスラム教国トルコのEU加盟、労働者の職を奪う東欧移民の増大などの事態への恐れがあったことが指摘されている。 (3)EU予算の不均衡 EUの諸機関が執行する予算は、2005年(暦年)で1166億ユーロ(表3)となっており、EUのGNPの1.27%の上限が定められている。財源は、1)賦課金(農業課徴金、砂糖課徴金)、2)共通関税(域外からの輸入物品に賦課)、3)付加価値税(加盟国の付加価値税ベースの約1%)、4)加盟国の分担金(国民総所得比に基づく)――の4つである。 2005年のEUの収入予算の加盟国分担割合は、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、オランダが上位を占め、この6カ国だけで全体の8割弱を負担している(表4)。同年の分野別支出予算は、農業が42.6%を占め、続いて構造政策(地域政策)、域内政策、域外活動などの分野に割当られている(表3)。 2003年予算の加盟国の対国民総所得(GNI)比の純受取割合(受取GNI比-拠出GNI比)は、オランダ、ドイツ、スウェーデン、ベルギー、ルクセンブルグなどの受取割合が拠出割合を大きく下回っている(表5)。1人当たり純受取額に関しても、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、ドイツ、ベルギーなどは、大幅なマイナスとなっている(表5)。 オランダの欧州憲法条約批准の国民投票においては、「EUへの分担金の払いすぎ」が否決理由の上位に挙げられた。また、EUは、1984年から農業補助金の受取額が少ないイギリスに配慮し、イギリスだけに予算の払戻金(リベート)制度を実施してきた(ネット分担金負担額の66%の払い戻し)。2005年予算でも、加盟国の拠出に基づく51億ユーロのリベートが認められている(表4)。EUの農業予算の規模や加盟国の状況は、制度導入時とはかなり変わってきており、現在進められている次期財政計画(2008~2013年)の策定において、このリベート制度の扱いが大きな問題となった。6月16日、17日の欧州理事会においては、リベートを一定額に抑えることを主張する仏独やルクセンブルグなどと、農業予算がEU予算の4割を占める現状を批判しリベート制度の変更に反対するイギリスが激しく対立し、次期財政計画の策定交渉は決裂した。 表3.EU予算の分野別割当(2005年) 分野 金額(百万ユーロ) 構成比(%) 農業 49,676 42.6 構造政策 42,423 36.4 域内政策 9,052 7.8 域外活動 5,219 4.5 行政運営費用 6,351 5.4 リザーブ 446 0.4 加盟前戦略 2,081 1.8 補償 1,305 1.1 合計 116,554 100.0 資料出所:欧州委員会ウェブサイト 表4.EU予算の加盟国分担割当(2005年) 加盟国 予算割当額 (百万ユーロ) 構成比 (%) イギリスへのリベートの割当額 (百万ユーロ) 人口 (2005年1月1日現在推計) (百万人) 1人当たりGDP (2004年) (EU25カ国平均を100とした場合の指数) ドイツ 22,218 21.11 327 82.6 109 フランス 17,303 16.44 1,417 60.2 111 イタリア 14,359 13.64 1,174 58.2 105 イギリス 13,740 13.05 -5,115 59.9 119 スペイン 8,957 8.51 707 42.9 98 オランダ 5,553 5.28 69 16.3 120 ベルギー 4,035 3.83 249 10.4 119 スウェーデン 2,833 2.69 42 9.0 116 オーストリア 2,308 2.19 35 8.1 122 デンマーク 2,131 2.02 170 5.4 122 ポーランド 2,099 1.99 164 38.1 47 ギリシャ 1,883 1.79 149 11.1 82 フィンランド 1,545 1.47 130 5.2 115 ポルトガル 1,443 1.37 116 10.5 73 アイルランド 1,341 1.27 106 4.1 139 ハンガリー 1,003 0.95 70 10.1 61 チェコ 932 0.89 70 10.2 72 スロヴァキア 393 0.37 29 5.4 52 スロヴェニア 300 0.29 23 2.0 78 ルクセンブルグ 241 0.23 20 0.5 223 リトアニア 222 0.21 16 3.4 48 キプロス 145 0.14 11 0.7 82 ラトビア 115 0.11 9 2.3 43 エストニア 101 0.10 7 1.3 50 マルタ 57 0.05 4 0.4 72 合計 105,259 100.00   458.5   注:イギリスへのリベートの割当額は、各加盟国の予算割当額に含まれる。 出所:欧州委員会ウェブサイト、欧州統計局(EUROSTAT)ウェブサイト 表5.EU予算の国別収支(2003年) 加盟国 純受取割合 (対国民総所得(GNI)比) (%) 純受取額 (百万ユーロ) 1人当たり純受取額 (ユーロ) オランダ -0.43 -1,956.1 -120.6 ドイツ -0.36 -7,651.8 -92.7 スウェーデン -0.36 -950.4 -106.1 ベルギー -0.28 -775.1 -74.7 ルクセンブルグ -0.28 -56.2 -125.1 イギリス -0.16 -2,763.3 -46.5 オーストリア -0.15 -336.2 -41.6 フランス -0.12 -1,910.9 -32.0 デンマーク -0.11 -213.7 -39.6 イタリア -0.06 -793.6 -13.8 フィンランド -0.01 -20.7 -4.0 スペイン 1.21 8,733.2 213.9 アイルランド 1.40 1,564.6 391.7 ギリシャ 2.22 3,368.2 305.3 ポルトガル 2.66 3,482.0 333.4 注:純受取割合=受取GNI比-拠出GNI比 出所:欧州委員会ウェブサイト 3.欧州憲法条約の概要および批准手続き 2004年5月、EUは、新規加盟10カ国を迎え入れ、25カ国に拡大した。これに先立ち、拡大EUが機能不全に陥ることが懸念されたため、2002年2月に各層の代表者約100名で構成される「欧州の将来に関するコンベンション(協議会)」が設置された。コンベンションは、EUの機構改革を含む将来像について幅広い議論を行い、欧州憲法条約草案を2003年6月の欧州理事会に提出した。草案は、EU加盟国政府の代表からなる政府間会議で検討され、2004年6月の欧州理事会において「欧州のための憲法を制定する条約」(欧州憲法条約)(表6)が採択された(10月29日に加盟国が署名)。 欧州憲法条約の発効には加盟25カ国の批准承認が必要である。批准の方法には、議会採決、国民投票、議会採決と国民投票の3種類がある。EUは、2006年11月1日の発効を目指し、加盟国の批准手続きを進めてきた。7月10日現在スペインが国民投票と議会採決、ドイツなど11カ国が議会採決で批准を終えている(表7)。 フランス、オランダの国民投票での否決、イギリスの批准手続き凍結表明後の6月16日に開催された欧州理事会は、憲法条約批准手続きの期限を2007年半ばまで延期することを決定した。この決定を受けて、デンマーク、チェコ、アイルランドが国民投票の延期を、フィンランド、スウェーデンなどが議会承認手続きの延期を表明した。7月10日のルクセンブルグの国民投票では、憲法条約批准を可決した。 表6.欧州憲法条約の概要 内容 前文 憲法条約調印にあたっての加盟国の共通認識(EUの歴史と遺産、統合の理念、多様性の中の統合等) 第1部 EUの定義と目標、基本権とEU市民権、権限とその行使、EUの機関、民主的運営、EUの財政、近隣諸国、加盟、脱退 第2部 EU基本憲章(人間の尊厳、自由、平等、団結、市民権、裁判に関する権利、一般規定) 第3部 EUの政策と運営(一般適用規定、差別禁止と市民権、域内政策と活動、諸外国・地域との連携、域外活動、EUの機能、一般規定) 第4部 最終規定(施行、改正手続、現行条約の廃止等) 主な特徴 EUに法人格を付与(国内法人格および国際法人格) 「欧州共同体(EC)」(第1の柱)、「共通外交・安全保障政策」(第2の柱)、「司法・内務協力」(第3の柱)の「三本柱」構造を廃止し、EUに一本化 EUと加盟国との権限関係を、EUのみが法的拘束力を有する措置を採択することができる「排他的権限」、EUと加盟国が共に法的拘束力を有する措置を採択することができる「共有権限」および基本的に加盟国の「権限」であるがEUも一定範囲で行動できる場合の3つに整理 欧州理事会(EU首脳会議)をEUの主要機関として法的に位置づけ、常任の欧州理事会議長ポストを新設(任期2年半) 特定多数決の議決要件を加盟国数の55%以上およびEU人口の65%以上(最低15カ国)に変更 欧州委員会委員の定員を2014年から、加盟国の3分の2に削減(それまでは1国1名体制) 共通外交・安全保障政策上級代表と欧州委員会の対外関係欧州委員の2つのポストを統合し、EU外務大臣ポストを新設 欧州議会の立法機関としての権限を明確化 EU市民に、欧州委員会に対する法案提出要求権を付与 参考:外務省ウェブサイト、駐日欧州委員会代表部『europe2005年春号』 表7.各国におけるEU憲法批准手続き   加盟国 批准手続 批准日程・結果 批准承認済 オーストリア 議会採決 国民議会2005年5月11日批准承認 連邦議会2005年5月25日批准承認 ドイツ 議会採決 連邦参議院2005年5月12日批准承認 連邦議会2005年5月27日批准承認 ギリシャ 議会採決 議会2005年4月19日に批准承認 ハンガリー 議会採決 議会2004年12月20日に批准承認 イタリア 議会採決 下院2005年1月25日に批准承認 上院2005年4月6日に批准承認 ラトビア 議会採決 議会2005年6月2日に批准承認 リトアニア 議会採決 議会2004年11月11日に批准承認 スロヴァキア 議会採決 議会2005年5月11日に批准承認 スロヴェニア 議会採決 議会2005年2月1日に批准承認 スペイン 国民投票 国民投票2005年2月20日実施(賛成76.7%、投票率42.3%) 議会採決 下院2005年4月28日に批准承認 上院2005年5月18日に批准承認 キプロス 議会採決 議会2005年6月30日に批准承認 マルタ 議会採決 議会2005年7月6日に批准承認 否決 フランス 国民投票 国民投票2005年5月29日実施(反対54.8%、投票率70%) オランダ 議会採決 国民投票 国民投票2005年6月1日実施(反対61.7%、投票率63%) 今後批准手続を予定 ベルギー 議会採決 上院2005年4月28日批准承認 下院2005年5月19日批准承認 地方自治体の総会での批准を順次実施予定 チェコ共和国 国民投票 国民投票の実施を2006年末から2007年初めに延期 デンマーク 国民投票 2005年9月27日の国民投票を延期 エストニア 議会採決 2005年秋の議会採決、その前の公聴会を予定。 フィンランド 議会承認 2005年秋に批准提案を議会に提出し、2005年末から2006年初めの採決を予定していた日程の延期を検討中 アイルランド 議会採決 国民投票 国民投票の実施を延期 ルクセンブルグ 議会採決 国民投票 2005年6月28日の第1回議会採決で批准承認。 国民投票2005年7月10日実施(賛成56.5%、反対43.5%) 議会の第2回採決を今後予定 ポーランド 国民投票 2005年10月9日の大統領選と同時に実施予定の国民投票を延期 ポルトガル 国民投票 2005年10月の地方選挙と同時に国民投票の実施を予定。政府は国民投票の延期を検討中 スウェーデン 議会採決 2005年夏までに批准法案を議会に提出し、12月までの批准承認を予定。議会は日程の延期を表明 イギリス 議会採決 国民投票 批准承認手続きの凍結を6月6日に表明 資料出所:欧州委員会ウェブサイト(2005年7月10日現在) 4.EUの歴史 欧州統合の歴史は、1951年にベルギー、ドイツ(連邦共和国)、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6カ国が、石炭と鉄鋼の共通市場を創設する欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立したことに始まる。 続いてECSCの6加盟国は、さまざまな物やサービスの共同市場を基礎とした欧州経済共同体(EEC)を1958年に設立した。EECは、1960年代に通商と農業の分野における共通政策を確立し、1968年7月1日には6カ国間の関税が完全に撤廃された。 1967年には、ECSC、EECと欧州原子力共同体(Euratom)の理事会および執行機関が統合され、以後3共同体は欧州共同体(EC)と総称されるようになった。 1973年には、デンマーク、アイルランド、イギリスがECに加盟し、6カ国から9カ国に拡大した。ECは、1975年に社会・地域開発・環境分野の共通政策を導入し、地域開発政策を遂行するための欧州地域開発基金が設立された。 1979年の欧州通貨制度(EMS)導入は、為替相場の安定化に貢献すると同時に、EC加盟国が相互の連帯を維持し、経済に規律をもたらす厳しい政策を実施するよう促した。 1981年のギリシャの加盟に続いて、1986年にはスペインとポルトガルがECに加盟した。その結果、加盟12カ国間の経済発展格差を埋めることを目的とした「構造」プログラムが導入された。 1985年、ジャック・ドロール欧州委員長率いる欧州委員会は、1993年1月1日までに欧州単一市場を完成させる計画を示した「ドロール白書」を発表した。1986年2月、この目標を正式に定めた単一欧州議定書が調印され、1987年7月1日に発効した。 1991年12月、マーストリヒトで開かれた欧州理事会において「欧州連合条約」が採択され、1993年11月1日、欧州連合(EU)が誕生した。欧州連合条約(マーストリヒト条約)は、1999年までの通貨統合、欧州市民権、共通外交・安全保障政策(CFSP)を含む新たな共通政策、域内の治安に関する取り決めなど、さまざまな野心的な目標を掲げた。 1995年1月1日、オーストリア、フィンランド、スウェーデンの3カ国が加盟し、EUは15カ国となった。2002年1月1日には、EU加盟国のうち12カ国(ユーロ圏)で、ユーロ紙幣と硬貨の流通が始まった。 2000年3月、リスボンで開かれた欧州理事会は、グローバル化がもたらす課題に対抗するため、EUの経済を近代化する包括的戦略を盛り込んだ「リスボン戦略」を採択した。同戦略には、経済のあらゆる分野を競争に開放し、革新と事業投資を奨励し、情報社会のニーズに応えられるよう欧州の教育制度を改革することなどが含まれていた。 2004年5月1日、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、スロヴェニア、キプロス、マルタの10カ国が新たに加盟し、EUは25カ国となった。2004年10月29日には、欧州憲法制定条約が調印された。 参考:駐日欧州委員会代表部『EUを知るための12章』 表8.EUの歴史 1951年4月18日 ベルギー、ドイツ連邦共和国、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6カ国、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立条約(パリ条約)に調印 1957年3月25日 EEC設立条約(第1ローマ条約)および欧州原子力共同体(Euratom)設立条約(第2ローマ条約)調印。調印国はECSC加盟6カ国 1958年1月1日 ローマ条約発効。EEC委員会初代委員長にワルター・ハルシュタイン、Euratom委員会初代委員長にルイ・アルマンが就任 1965年4月8日 欧州3共同体(ECSC、EEC、Euratom)の理事会および執行機関を統合する条約(ブリュッセル条約)に調印 1967年7月1日 ブリュッセル条約発効により、単一閣僚理事会、単一委員会(EC委員会)発足。以後3共同体は欧州共同体(EC)と総称される。EC委員会の初代委員長にジャン・レイが就任 1968年7月1日 関税同盟完成、対外共通関税創設 1968年7月29日 共同労働市場創設に向けた共同体内の労働者の自由移動が保障される 1969年12月1-2日 元首・首脳がハーグで会合を開き、単一市場の完成、統合の一層の推進、EC拡大を討議。1980年までに経済通貨同盟(EMU)へ段階的に進むこと、統合と政治分野での協力の加速で合意。また、デンマーク、アイルランド、ノルウェー、イギリスとの交渉を開始することでも合意 1969年12月19-22日 理事会、農業に関する財政的な取り決めで、EC独自財源を充当し、欧州議会の予算に関する権限を強化することで合意 1970年1月1日 対外通商政策に関する権限が加盟国からECに移行 1973年1月1日 デンマーク、アイルランド、イギリスが加盟し、ECは正式に9カ国に拡大。共通通商政策に関して、ECに単独の権限が認められる 1974年1月21日 雇用・社会問題担当相理事会、共同体の社会行動プログラムを採択、雇用問題、生活・労働条件の調和、EC社会・経済政策の決定への労使の参加の3分野がECの活動の対象になる     1975年3月18日 理事会、欧州地域開発基金の設置で合意 1977年7月1日 加盟9カ国間の関税撤廃 1978年7月6-7日 ブレーメン欧州理事会、欧州通貨制度(EMS)と欧州通貨単位(ECU)を設置する計画を承認 1979年3月13日 EMS発足 1979年6月7-10日 加盟9カ国で直接普通選挙による初めての欧州議会選挙が実施される 1979年7月17-20日 直接選挙で選ばれた欧州議会の初めての総会、ストラスブールで開催、シモーヌ・ベイユを初代議長に選任 1981年1月1日 ギリシャが10番目の加盟国に 1985年6月14日 欧州委員会、単一市場完成に関する白書を提出 1986年1月1日 スペインとポルトガルが加盟、加盟国は12カ国に 1986年2月17日、28日 単一欧州議定書、加盟12カ国政府により調印 1987年7月1日 単一欧州議定書発効 1991年12月9-10日 マーストリヒト欧州理事会、欧州連合条約草案に合意 1992年2月7日 欧州連合条約(マーストリヒト条約)調印 1992年5月2日 ECと欧州自由貿易連合(EFTA)の外相、ポルトにて欧州経済領域(EEA)設立協定に調印 1993年1月1日 単一市場始動 1993年11月1日 欧州連合条約(マーストリヒト条約)発効により欧州連合(The European Union=EU)創設 1995年1月1日 オーストリア、フィンランド、スウェーデンがEUに加盟 1997年6月16日、17日 政府間会議、アムステルダムでの首脳会議で新欧州連合条約(アムステルダム条約)に合意 1997年10月2日 アムステルダム条約調印 1999年1月1日 EMU第三段階スタート、欧州単一通貨、ユーロが誕生 1999年5月1日 アムステルダム条約発効 1999年9月13日 理事会、EU共通外交・安全保障政策(CFSP)初代上級代表およびEU理事会事務総長にハビエル・ソラナを任命 2000年3月23-24日 雇用拡大と経済社会改革推進のための特別欧州理事会をリスボンにて開催 2001年12月15日 ブリュッセル首脳会議で、次期政府間会議(IGC)に先立ち、EUの将来に関して討議する「欧州の将来に関するコンベンション(協議))」の創設を宣言 2002年1月1日 ユーロ紙幣・硬貨の流通開始 2002年12月13日 コペンハーゲン欧州理事会で、2004年の10カ国加盟を正式決定 2003年2月1日 ニース条約発効 2003年6月13日 「欧州の将来に関するコンベンション」欧州憲法制定条約草案を採択 2004年5月1日 チェコ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキアがEUに加盟 2004年10月29日 欧州憲法制定条約調印 資料出所:欧州委員会駐日代表部ウェブサイトより抜粋 5.EUの機構 (1)欧州連合とは 欧州連合(EU:European Union)は、欧州25カ国が加盟する国家連合体・統合体で、「欧州連合を設立する条約(マーストリヒト条約:1993年11月1日発効)」など、加盟国間で締結された基本条約に基づき、設立・形成されている。 (2)EUが目指す3つの統合 1)経済・通貨統合、2)共通外交安全保障政策、3)司法・内務協力 (3)EUの機関 欧州理事会(European Council) 加盟国首脳によるEUの最高政策方針決定機関(EU首脳会議またはEUサミットと呼ばれる)。年4回(前半2回、後半2回)開催され、6カ月任期の輪番制で議長国が議長を務める。EUの基本的方針を定め、その決定は、法的拘束力を持たないが、政治的に権威のあるものとして尊重される。欧州委員会委員長、欧州連合理事会事務総長なども出席。 欧州連合(EU)理事会(Council of European Union) 総務・対外関係を含む9政策分野の加盟国担当閣僚による立法・政策決定機関。会議の議題の分野を担当する各加盟国閣僚級代表1名が出席する。EU理事会は、欧州議会と立法権および予算に関する責任を共有しており、欧州委員会から提案のあった法案や政策を検討し、採択する。理事会の決定は、基本条約に基づく全会一致または単純多数決、もしくは特定多数決による。 欧州委員会(European Commission) 欧州委員会は、欧州全体の利益を代表する政治的に独立した機関であり、1加盟国から1人ずつ任命される計25人の委員で構成されている。「基本条約の守護者」として、EU理事会や欧州議会で採択された規則や指令が適切に適用されているかを監督する。また、EUの行政執行機関として共通農業政策などに関するEU理事会の決定を実行する。欧州委員会は、EU内で唯一、法案の発議権を持つ機関となっている。 欧州議会(European Council) 欧州議会は、各加盟国の直接選挙によって選出された議員(732名、任期5年)で構成され、EU市民を代表し、欧州議会と共同で法案の制定にあたる。EU予算の採択に関しても、欧州議会とEU理事会が同等の権限を有している。欧州議会は、EUの諸活動に対し、民主的なコントロールを行う機関であり、欧州議会を総辞職させる権限を有している。 2005年7月 フォーカス: EU憲法批准否決の波紋 EU: 統合にブレーキ ―欧州社会モデルの模索は続く イギリス: 否決のドミノ現象回避、英国は国民投票の実施を凍結 アメリカ: EUの将来を注視するアメリカ ドイツ(1): EU憲法 ドイツ(2): 今こそ社会的欧州のためにイニシアティブを! フランス(1): EU拡大を背景に高まる雇用情勢悪化に対する国民の不満と不安―新内閣の優先課題は、「雇用創出」 フランス(2): フランス労使団体の声明 関連情報 海外労働情報 > フォーカス:掲載年月からさがす > 2006年以前 > 2005年の記事一覧 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:カテゴリー別にさがす > 労働法・働くルール 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > EUの記事一覧 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > EU・欧州 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > EU 調査研究成果 調査研究成果の概要 プロジェクト研究シリーズ 政策論点レポート 成果の概要 研究報告書・レポート 労働政策研究報告書 調査シリーズ 資料シリーズ 労働政策レポート ディスカッションペーパー 英文レポート・国際共同研究 JILPT Report 国際共同研究・学会等 職業情報・就職支援ツール OHBYカード VRTカード キャリアシミュレーションプログラム キャリア・インサイト(統合版) 職業適性検査・職業興味検査 HRM(Human Resource Management)チェックリスト 研修実施マニュアルVer.1.0『ここがポイント!求職活動マインド~希望の就職を目指して~』 「職業相談の勘とコツの『見える化』ワークショップ」マニュアル Ver.3.0 厚生労働省編職業分類 職業レファレンスブック 職業ガイダンス資料シリーズ --> JILPTデータ・アーカイブ 国内労働事情 モニター調査 定点観測調査(企業・個人) 調査シリーズ・資料シリーズ 国内労働情報 その他の報告書・レポート 取材記事バックナンバー 海外労働情報 国別労働トピック 国別基礎情報 フォーカス 海外調査シリーズ 諸外国に関する報告書 海外統計情報 海外関連イベント 海外リンク 調査研究成果一覧 発表年別 研究領域別(研究体系トップ) 基幹アンケート調査 日本労働研究雑誌 ビジネス・レーバー・トレンド 労働問題Q&A--> 職業・キャリア関連ツール 雇用関係紛争判例集--> このページのトップへ 個人情報保護 サイトの使い方 ウェブアクセシビリティ方針 サイトポリシー 独立行政法人労働政策研究・研修機構 法人番号 9011605001191〒177-8502東京都練馬区上石神井4-8-23 Copyright c 2003- 独立行政法人労働政策研究・研修機構 All Rights 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